ベーシストの皆様、バンドで合わせると、「ベースの音が抜けてこないなー」とか、「ベースが変に目立っているなー」っていう経験ありませんか?
バンド全体のまとまりをよくするために、バンドサウンドにあわせたベースの音作りは必須!
今回は、音作りの肝となるベース・プリアンプに焦点を当ててみましょう!
そもそもプリアンプって何?
「プリアンプってよく聞くけど、結局どういう役目のものなの?」
という疑問をお持ちの方にご説明しましょう。
一言でプリアンプと言っても、種類があります。
①ベースアンプ内蔵 プリアンプ
※Ampeg SVT-3Pro(写真左)、Hartke A100(写真右)
みなさん、ベースの音を出す時にベースアンプ使ってますよね?
ベースアンプは、
「プリアンプ」、「パワーアンプ」、「スピーカー(コンボアンプのみ)」
で構成されています。
「プリアンプ」・・・音を作る部分
「パワーアンプ」・・・作った音を増幅させ、大きくする部分
「スピーカー」・・・音を鳴らす部分
それぞれ、上記のような役目を持っています。
②オンボードプリアンプ
※写真は、AguilarのOBP1
お次にこちら。
これは、ベース本体に内蔵するタイプのプリアンプ。
通称、「オンボードプリアンプ」というものです。
パッシブピックアップにプリアンプをオンボードすることでアクティブ化することができます。
③アウトボードプリアンプ
※SANSAMP BassDriver DI(写真左)、MXR M-80 Bass D.I. +(写真右)
こちらは、アウトボードプリアンプ。
プリアンプをエフェクトペダルのような形にしたものです。
音質補正したり、EQ機能を搭載していたり、また機種によっては歪みサウンドを作ることができるものもあります。
お使いのベースがアクティブ・パッシブに係らず、使用していただき大丈夫です。
全てのプリアンプ共通の事項としては「基本的な音を作る」という用途であることですね。
そして今回、焦点を当てるのは、この③アウトボードプリアンプです。
アウトボードプリアンプの接続順は?
プリアンプってアンプの中にあったり、ベースの中にあったり・・・じゃあ、どういう風に接続するの?
って思いますよね。
これが、このアウトボードプリアンプの面白いところ!
■使用例①
ベース → アウトボードプリアンプ → エフェクター → アンプ
この接続順は、オンボードプリアンプの役目に近いですね。
パッシブのベースをアクティブサウンドにするイメージです。
ベース本体の音質を補正したり、EQを使い基本的な音を作るという目的になります。
その後にエフェクトをかけるという手順ですね。
■使用例②
ベース → エフェクター → アウトボードプリアンプ → アンプ
イメージとしては、エフェクターを介したサウンドに対して、音量・音質を変化させるという方法ですね。
例えば、ベース・ソロの時にプリアンプを踏むというようなブースター的な使用もOKです。
■使用例③
ベース → エフェクター → アウトボードプリアンプ → エフェクター → アンプ
この使用例は、かなり様々なパターンがありますね。
例えば、一番最初のエフェクターはコンプを使い、その音質をプリアンプで増幅し、さらにエフェクトをかけるという方法や、
歪み音色を作ることができるプリアンプを使い、歪みエフェクターとして使用する方法など・・・様々な用途があります。
歪みサウンドを作るプリアンプとして定番なSANSAMP BASS DRIVERやMXRのM-80はこちらで検証しておりますので、参考にしてみてください。
■使用例④
ベース → アウトボードプリアンプ →アンプ(Return端子)
先ほどご説明したようにベースアンプにはプリアンプ部があります。
アウトボードプリアンプを直接ベースアンプのエフェクト センド/リターン端子のリターン端子につなぐことで、ベースアンプのプリアンプ部をすっ飛ばし、足元のプリアンプで作った音をアンプのパワーアンプで増幅することができます。
ベースアンプのプリアンプ部の役目をアウトボードプリアンプで行い、基本的なサウンドを作るという方法ですね。
ライブハウスにある据え置きのベースアンプは、様々な機種があります。中には苦手だな・・・っていうブランド・機種がプレイヤーによってはあるかもしれません。
この接続順にすれば、自分のアウトボードプリアンプの音が基本となるので、どんなアンプでも好みのサウンドが作りやすくなります。
使用例⑤
ベース → エフェクター
→アウトボードプリアンプ(バランス・アウト)→PA
→アウトボードプリアンプ(ライン・アウト)→ベースアンプ
これはDI機能が付いているモデルに限定されますが、プリアンプをDIとして使用する場合の使用例。
こうすることで、自身のエフェクトボードで作り上げた音を、そのまま客席のスピーカーから鳴らすことができます。
と、いくつか使用例を挙げてみましたが、このアウトボードプリアンプ自身、機種によって性能、機能、音質の特徴が違うので用途は様々。
これ!といった正解があるのではなく、やはりどういうサウンドを出したいかで選択するプリアンプは変わりますし、接続順も変わってきます。必要であれば、プリアンプを複数個使用することだって間違いではないのです。
そんなあらゆる可能性を秘めているのがアウトボードプリアンプなんです。
さて、前置きが長くなってしまいましたが、これからが本題!
それではプリアンプを比較していきましょう!
検証方法
今回使用するベースはこちら!
HISTORY GH-BJ4V/C
アルダーボディ特有の粘りのある中音域が深く芳醇なトーンが特徴のジャズベースです。アクティブ/パッシブの切り替えが可能ですが、今回は純粋なパッシブサウンドで演奏します。
元となるフレーズがこちら。
録音環境は、ベース→プリアンプ→オーディオインターフェイス→PC(DAW)となっております。
ベースを直で接続し、指弾きナチュラルサウンドです。これがプリアンプを通すことでどう変化するか聞いていきましょう!
Providence DBS-1
まず、はじめに検証するのはこちら、Providence DBS-1。2013年の6月頃に発売された比較的新しい機種です。
EQを搭載したモデルで、音質補正やEQを使った音作りができます。
また、特筆すべきは
2つのインプット(A/B)と各チャンネルごとに3バンドのEQとマスターセクションがあること。
Input Aには、メインベース、Input Bには、フレットレスベースというようにライブ中に2本ベースを使う場合も切り替えが簡単です。
またInput Aのみ使用する場合は、2系統のEQ-MASTERを切り替えて使用できるので、指弾き時のEQとスラップ時のEQというような使い分けも可能です。
非常に現場力の強い実用的な1台ですね。それではサウンドチェック!
まずは、EQを全てフラットにしたサウンド。
DBS1を通すことで、ベースのサウンドが若干太くなり、音がしまったような印象です。
大げさなアクティブサウンドではなく、ベース本来の音をきちんと尊重しつつ、バンドアンサンブルの中で活きるサウンドになります。
②ドンシャリ風サウンド
こちらは、低音域・高音域を強調させ、中音域を若干削ったドンシャリ風サウンド。
低音を強調したため、非常に音が太くなりました。
EQの可変幅は、演奏する上で実用的な範囲内できちんと変化させることができます。
ここまでEQで増幅させているのにもかかわらず、ベース本来の音質に乗っ取ったサウンドを保っていることに驚きです!
ドンシャリサウンドとは真逆で、中音域を目立たせ輪郭をはっきりさせたサウンドです。
このDBS1の大きなポイントの一つは、ミッド・レンジ。
ミッドレンジはパラメトリック・イコライザーになっているため綿密な音作りが可能です。
こちらのサウンドはロー・ミッド寄りで作っていますが、ハイ・ミッドにするとキャラクターも大きく変化します。
DBS-1のサウンドは、一言でいうと上質。
ベース本来が持つサウンドをきちんと尊重しつつ、より実践的で使えるサウンドにしてくれます。
プリアンプ特有のサウンドやアクティブ回路搭載したベース特有のサウンドに苦手意識がある方にとっても、味方になってくれる一品です。反面、プリアンプで大きくベースサウンドの質を変化させたいというベーシストには合わないかもしれません。
また、これまで説明してきた機能に加え、MUTEスイッチやTUNERアウトも搭載し、非常に実践的な使用ができるというポイントも大きいですね。
また、このDBS1には12VのACアダプターが付属しており、これを昇圧して内部回路電圧は24Vで駆動しています。
実は付属のアダプターではなく、一般的なエフェクターに使用される9VのACアダプターを使用した場合は、内部電圧は18Vで駆動し、そうすることでキャラクターが変化するという裏ワザも持ち合わせています。
実際、DBS1を使用しているプロベーシストの中には、好みにあわせてアダプターを変えているんだとか?!
一度、試してみてはいかがでしょう?
Providence DBS-1
メーカー希望小売価格(税抜)¥35,700 (税込 ¥37,485)
販売価格(税抜)¥28,477 (税込 ¥29,901)
JAN:4539587080809
HAO BASS LINER
続いてはこちら、HAOのBASS LINER。2012年の春ごろに発売された機種です。
BASS LINERも発売されてそれ程月日は経っておりませんが、新世代プリアンプとして確立した優秀なモデルです。
先ほどのDBS1と同じく、EQを搭載した音質補正として使えるモデルです。
5バンドEQのため、より細かく絶妙な音作りが可能です。
「原音をピュアに生かす驚異的なフラット性能を誇るプリアンプ」という謳い文句ですが、その実力はいかほどか?!
うん、確かにフラットなサウンドですね。
DBS-1と比べると、若干プリアンプを通したなっていうように音に色付けがされた印象です。
ナチュラルながら、きちんと使える音に変化してくれているのがポイントですね。
続いては、ドンシャリサウンドです。
BASS LINERのEQコントロールは50Hzに対する±18dBですので、DBS1の60Hzに対する±14dBと比較するとより低音が深くかかってますね。商品検証なので、深めにEQをかけて、低音を強くしてみました。
バンドであわせる時は、バランスをとってくださいね。
5バンドEQなので、ミドルの音作りは幅広いですね。
ベースアンプのEQをいじっているような感覚に近いです。
これも、ベース原音に逆らうことなく、音作りができます。
このHAOのBASS LINERとProvidenceのDBS-1は、まさに直接対決がふさわしい原音忠実をコンセプトにしたプリアンプ。
プリアンプを通すと、そのプリアンプのサウンドになってしまうという不満を聞くことがあります。(もちろん、それも好みによって良し悪しあるのですが・・・)
両方とも原音をもとに、EQでナチュラルな音作りができるという機種です。
両方弾き比べてみると、BASS LINERの方がプリアンプとしての色付けが少しだけ濃いかな?という印象ですね。
ただ、やはりBASS LINERの強みは5バンドEQ。欲しい、または削りたい帯域の音をかなり幅広く音作りできるところが強みでしょうか。
こちらもMUTE機能搭載ですよ。
そして・・・ボディカラーがかっこいい!!
HAO BASS LINER
メーカー希望小売価格(税抜)¥26,800 (税込 ¥28,140)
販売価格(税抜)¥22,858 (税込 ¥24,001)
JAN:4580228394489
Freedom C.G.R. × Akima&Neos WildStomp
さて、お次に紹介するのは、Freedom C.G.R. × Akima&Neos WildStomp!
2013年春ごろに登場したこの機種は、今までの2機種とコンセプトが大きく異なります。
ライブでこのサウンドを響かせたらかっこいいでしょ!って感じのこのプリアンプならではのサウンドをもった逸品です。
Modeスイッチを入れると歪みサウンドを作ることもできます。
コントロール系が普通のプリアンプと異なるので、まず各コントロール類のご説明から。
- Bottom → 低域とアタックのコントロール
- Bump → ハーモニクス(高域、歪み)のコントロール
- Kick Up → Bumpの音量のコントロール
- Total → マスターヴォリューム。BottomとKickUPで決めたバランスの音量を変化させる
という、一風変わったコントロール。
それではサウンド・チェックしていきましょう!
①ナチュラルサウンド(Deep Mode)
こちらは、Bypass Switchを踏み、ONにした状態。
この段階ではDeepModeと呼ばれるナチュラルサウンドです。
このモード時は、BumpとKick UPのコントロールは出来ず、Bottomで作ったサウンドをTotalで上げ下げするのみというシンプルなセッティングです。
「ベース本体が持つ音響特性の弱点を補い、必要とされるハーモニクスをコントロールすることで、ポジション、弦などによる音量や音質を改善し、スムーズに音像を前に引き出します」というようにメーカーさんのHPでは謳っています。
実際聞いてみると、ベースのサウンドがかっこよくなった印象! ※抽象的な表現ですいませんm(_ _ )m
コンプとは違い、ベースの芯となる音が太くなっています。もう少し厳密につまみを調整すれば、これだけで音作り完成って言えるんじゃないでしょうか?
さて、次はModeスイッチをONにしたWildMode。
全てのコントロール類で調整ができ、歪みサウンドを作ることができます。
まずは、歪みを薄めにかけてみました。
歪ませても、音の芯の太さはしっかり残っています。
ヴィンテージのチューブアンプを鳴らしているみたいですね。
続いては、歪みをがっつりかけてみました。
これだけ歪ませても、音の芯はしっかり残っています。ある意味、驚異的!
このサウンドは、はまる人にはホントたまらないプリアンプではないでしょうか?
ベース本体の足りない音域をカバーし、しっかりとした芯を持ったサウンドに仕立て上げられてしまいます(笑)
そのサウンドは、やっぱりかっこいいの一言。
今回のフレーズは指弾きですが、ピックでゴリゴリやっても良さそうですね。
活躍するジャンルは限定されますが、そのフィールドでは類を見ない活躍をしてくれそうです。
Freedom C.G.R. × Akima&Neos WildStomp
販売価格(税抜)¥56,953 (税込 ¥59,801)
JAN:4580246223013
aguilar TONE HAMMER
最後に紹介するのはこちら、Aguilar(アギュラー)のTONE HAMMER。
TONE HAMMERの良いところは、プリアンプに求めるあらゆるニーズに幅広く答えることができる点だと思います。
プリアンプとしては、基本的に原音忠実。歪みサウンドを作ることができるし、DI機能もついている、というように先ほどいくつかプリアンプの使用例を挙げましたが、どの方法でも対応できるというところが万人受けするポイントです。
とはいえ、機能だけ豊富ではいけません。
肝心なサウンド、チェックしてみましょう!
うん、原音に忠実ですね・・・っていうよりほぼ原音そのままっていう感じですね。わずかに音が艶っぽくなった印象です。
コントロール類をフラットにしていると、プリアンプとしての色付けはほとんどなく、EQで音作りをしていくという用途が正しいでしょう。
それではEQをいじってみます。
もっとド派手にEQをかけることはできますが、アンサンブルでも使える現実的なサウンドで弾いてみました。
EQの可変幅は、BASS LINERとほぼ同じです。
きちんと使えるサウンドを作ることができますし、やはりベースの原音に忠実だなっていう印象ですね。
③ミドルを強調し、輪郭を際立たせたサウンド
MID FREQをコントロールすることで、中域の周波数帯域を選ぶことができます。
ミドルの音色を細かくコントロールできるのは、音作りにおいては欠かせないポイント。
※ちなみにMID FREQで選択できる周波数帯域は、DBS1(150Hz~1khz):TONE HAMMER(180Hz~1khz)です。
さて、TONE HAMMERは歪ますこともできるので、歪みサウンドも検証してみましょう
TONE HAMMERはAGS(ADAPTIVE GAIN SHAPIN)機能を搭載しています。
※AGS機能とは・・・
AGUILAR独自の回路でゲインおよびEQの構成をゲイン・ノブの設定①に対応して理想的なビンテージ・サウンドに満ち溢れたブーストを加えます。ゲイン・ノブの設定が低ければ適応するEQはフラットに、高ければ音の立つメリハリの効いたEQセッティングとなります。
このAGS機能をONにし、ゲインを高く設定すれば音は歪んでいきます。
まずは軽めに歪ませてみました。
歪ませてみても、原音のなごりがよくわかりますね。
次は思いっきり歪ませてみます。
かなり激しく歪みがかかりましたね。
ポイントは歪みの幅の広さでしょうか。ファズに近いサウンドも作ることができますね。
あらゆるポイントをしっかり押さえたプリアンプ、ToneHAMMER。
原音に忠実はEQと、幅広いサウンドを作ることができる歪み、そしてDI機能搭載という万能さは評価が高いですね。
ベースに内蔵するタイプのオンボード・プリアンプのOBP-3の回路を採用していることもあり、まさに原音忠実。
DBS-1やBASS LINERと違い、プリアンプで音質補正というよりは、原音に対しEQで音作りという印象です。
プリアンプを選択する上で、このフラットさを良しとするかどうかは演奏するジャンルやプレイヤーによって評価がわかれるところ。
Aguilar TONE HAMMER
メーカー希望小売価格(税抜)¥32,000 (税込 ¥33,600)
販売価格(税抜)¥23,620 (税込 ¥24,801)
JAN:4959112064188
まとめ
さて、いかがでしたでしょうか?
ベース・プリアンプは今回ご紹介した機種以外にも様々な種類があり、それぞれスペックだけでは語れない異なった音色・機能を持っています。
ベースの音はベースアンプで作るという方もいっらしゃるとは思いますが、ライブハウスで演奏する際、実際に観客席に届く音は、ベースアンプを通す前のDIを通った音です。
ベーシストは、DIを通る前までに、届けたいサウンドを作っておく必要があります。
※本当はDIにだってこだわらなければなりません。
必ずプリアンプが必要というわけではありませんが、プリアンプは音作りにおいて大きな味方になってくれると思います。
是非、自分にあったプリアンプを探してみて下さいね!