最近はエフェクトボードにこだわる方も増えてきています。
そこで困るのが、シールドの長さ。
市販のパッチケーブルだと短すぎるけど、メートル単位だと長すぎる…
そんな時にシールドを自分で作れたら便利ですよね!
今回はCAJの千葉成基氏にご登場いただいて、シールドケーブルの作り方を学んでみます。
CAJ 千葉成基氏
ギタセレでも一度ご登場いただいていますが、千葉氏はCAJブランドの下、ミュージシャンのサウンド・システムを構築している敏腕の職人。
ラックでもボードでも、エフェクターやアンプを使用する際、常にトータルで使いやすさと音質の良さを追求しています。
そんな千葉氏がこれまで組んだシステムは数知れず。
おのずとそれに必要なシールドも、最適な長さで製作しますね。
千葉氏が組んだボードは一目で分かります。
なんてったって見た目が美しい!
たとえばこんな感じです。
見事に必要な長さのシールドが配置され、無駄を排除しています。
シールド自作に必要なもの
シールドを作ろう!
といっても何も無ければ作れません。
まずは必要なものを揃えましょう。
■シールドケーブル
まずはもちろん、シールドケーブル本体が必要です。
後ほど紹介しますが、島村楽器でも自作用に切り売りでシールドを販売している店舗があります。
今回使用するのはもちろんCAJの「Guitar Cable」です。
ミュージシャンのシステムでも、もちろんこのシールドを使用しています。
■プラグ
CAJの組み上げられた市販のシールドで使用されているプラグは、このSwitchcraft製。
今回もこのプラグを使ってシールド作りを行っていきます。
■ハンダ
プラグとケーブルを接続するためにしようするハンダ。
いろんな種類のハンダが販売されていますが、有名なのはKesterの44あたりですね。
千葉氏いわく、「ハンダで音は絶対に変わります!」とのこと。
ハンダ選びも慎重に行いましょう。
■ハンダごて
まあハンダを使うわけですから、ハンダごてももちろん必要ですね。
このハンダのように、ターボスイッチが付いているものが千葉氏のオススメ。
また、このこてスタンドはクリーナーも装備されたもの。
千葉氏はクリーナーを使ってこての先を常に綺麗な状態で使用していました。
■ワイヤーストリッパー
ケーブルの被膜を剥いたり、カットしたりする時に使います。
ケーブルの径に合わせたものを選びましょう。
こんなにゴツイですが、先端は細かい作業に適するようになっています。
■プラグ固定台
プラグにケーブルをハンダ付けする際、プラグを持ちながらはかなり無理があります。
しっかりプラグを固定できるものを用意しましょう。
ミニ万力なんかもオススメです。
■テスター
シールドが出来上がったら、しっかり信号が流れるかどうかチェックします。
プラグ自体の導通がうまくいっているか、ケーブル自体に断線がないか、を確かめましょう。
■ドライヤー
収縮チューブを暖めて収縮させるときに使います。
家庭用のドライヤーでも問題ありません。
■カッター
シールドの被膜剥きで使用します。
薄い被膜はカッターと手で剥きましょう。
■ニッパー
もちろんケーブルをカットする際に使用しますが、千葉氏はコレ一本で被膜剥きまでこなします。
「慣れるとそれが一番早いから」だそうです。
■ラジオペンチ
プラグ内プレートの角度を変えたり、最後にかしめたりする際に使用します。
ちなみにここまで出てきた道具は島村楽器やホームセンターでも買えるような一般的なもの。
何も特別なものを使用しているわけではないらしいです。
シールドケーブルの作り方
それではさっそく千葉氏にシールドを組み上げてもらいます。
ここではあくまでも一般的な手法を紹介します。
最後の動画では千葉テクニック炸裂の、シールド製作も見られますので要チェックですよ。
1. プラグの用意
プラグキャップの中にはこういった絶縁体が入っています。
(入っていないものもあります。無ければぜひ別売りで用意することをオススメしますよ!)
ケーブルとの接続部分の角度を調整します。
これは熟練の技ですね。
千葉氏は少し内側に曲げていました。
プラグを固定台にセット。
ハンダ付けの際に動かないようにしっかり固定。
プラグの上下に気をつけて。
この台座はミニ万力などでも代用OKですね。
2.シールドの用意
次にシールドケーブルの準備に取り掛かります。
まずは保護被覆(シース)を剥く長さを決定します。
ここから、
ここでプラグキャップと収縮チューブをシールドに通しておきます。
これを忘れるとちょっと悲惨…(涙)
ではさっそく剥いていきます。
カッターでぐるっと切込みを入れて
引っ張ると、あら綺麗に剥けました!
ちなみに今飛び出してきたのが「シールド」(外部導体)部分です。
これがあることで外部からのノイズに対抗できるんです。
続いて出てきた「誘導体」を覆う薄い被膜を、先ほどと同じ要領で剥いていきます。
そうして頭を出してきた内部導体。
俗に言う「芯線」ってヤツですね。
ここで、飛び出ている先ほどの外部導体をよって1本にまとめます。
外部導体の長すぎるところをカット。
千葉氏はもう感覚でやっていますが、プラグにあてがってみると余分な長さが分かります。
(千葉氏、カット予定のところにはハンダ自体つけていませんw)
3.ハンダ付け
さあいよいよハンダ付けですよ!
ハンダを当てる時間が長すぎると、ハンダ自体が変質してしまってサウンドに影響を与えてしまうので、素早く作業する事が大切です。
4.仕上げ
ここまで来たらあとはカンタン。
ペンチでプラグのツメ部分をかしめて、
千葉流ボード組み込み術
ここまで、一般的なシールドの作り方を見てきました。
もちろんシールドは片側だけでは出来上がらないので、もう一方で同じ作業を行わないといけませんが、長さを決めるときのコツを伝授。
■ボード組み込み時の長さ決定
千葉氏は、シールドの片側ににプラグを接続したら、ジャックにこのように挿します。
シールドに負荷がかからないよう、十分な余裕を持たせます。
(それでいて長すぎないという、絶妙なポイントを狙っていきましょう!)
■「千葉流」を動画でチェック!
実は今回のシールド製作、カッターを使用する一般的なやり方と共に、千葉流の「ニッパーを使用したやり方」も撮影してきました。
ここでその二つを動画でチェックしてみましょう!
さあいかがでしょうか?
これまで何千、何万のシールドを作ってきたんでしょうか?
こんなにスムーズな作業は中々見られませんね。
自作シールド・ケーブル製作をするために
最後に、「じゃあ俺も作りたい!」ってなってしまった方のために。
島村楽器では自作シールド用の切り売りケーブル、プラグ、工具類の展開をスタートしています。
現時点では5店舗でこんな感じ(↓)のコーナーを展開中~
■展開拠点
気になる展開拠点は…
以上の5店舗。
今後も増えていくかもしれないので、要チェックです。
ラインナップ紹介
ではどんな商品がラインナップされているか見てみましょう。
▼CAJ Guitar Cable
今回ご登場いただいた千葉氏が所属するCAJ(Custom Audio Japan)のシールドケーブル。
プラグの付いた状態で、パッケージングされて販売されているので、目にする機会が非常に多いモデルです。
一番の売りは、CAJの基本理念ともいえる「音を変えない」という点。
さらにCAJのGuitar Cableは柔軟性の高さが魅力。
千葉氏がシステムを構築する際の重要視するポイントとして、「ケーブルに負荷をかけない」という事があります。(メーカー探訪「CAJ」参照)
それが実現できるケーブルがコレなんです。
販売価格(1mあたり)(税抜)¥400 (税込 ¥420)
▼MOGAMI 2524
長野県に工場を置くMOGAMI電線のギターシールド。
マイクロフォニック現象(シールドを床に叩き付けるとおきるノイズ)を抑えるために、シールド(外部導体)の下に導電性ビニルの層を配したケーブルです。
非常に素直な音質が特徴で、ケーブルで音質を変えたくないという方にオススメ。
多数の有名ミュージシャンも使用する、日本が誇るケーブル会社のギターシールドです。
販売価格(1mあたり)(税抜)¥171 (税込 ¥180)
▼Belden 9778
まあもう説明も要らないくらい有名なギターシールド、Beldenです。
これはその中でも9778というモデルで、一番人気があります。
というのも、「徹底検証」でチェックしたようにオーソドックスで、帯域の拾いサウンドというのが理由。
また、Beldenのシリーズの中でも、ケーブル自体の硬さが一番柔らかいので、パッチケーブルでもよく使用されます。
販売価格(1mあたり)(税抜)¥466 (税込 ¥490)
▼Switchcrafrt 226、280、380
Switchcraftという名前も広く知れ渡っていますね。
CAJ、Belden、MOGAMIのシールドと組み合わせたパッケージ品も販売されている。一番スタンダードなプラグといえるでしょう。
それもそのはず、ギターやベースのジャック部分にはSwitchcraft製のジャックが使われている事が多く、そのサイズとマッチしたプラグを選ぶとなるとやはりSwitchcraftとなるんです。
一番左の226はL型、真ん中の280はストレート。
さらに一番右はボードに組み込む際に便利なミニサイズの380。
販売価格
226:(税抜)¥630 (税込 ¥662)
280:(税抜)¥445 (税込 ¥468)
380:(税抜)¥700 (税込 ¥735)
▼NEUITRIK NP2X、NP2RX
やはりNEUITRIK(ノイトリック)も外せません。
左のストレートがNP2X、右側がL型のNP2RXです。
ノイトリック独自のチェック方式と言うケーブルとの接続方法が、高耐久性につながっています。
まず見た目も頑丈そうですよね。
販売価格
NP2X:(税抜)¥819 (税込 ¥860)
NP2RX:(税抜)¥761 (税込 ¥800)
▼G&H BIGFOOT、RIGFOOTシリーズ
芯部の素材にOFC(無酸素銅)を採用し、独自の路線を行くG&H。
最近ではAnalysis Plusなど、このG&Hプラグを採用しているシールドメーカーも増えています。
本国アメリカではSwitchcraftに迫る勢いだとか。
デザインもシンプルで、洗練された印象を受けます。
ちなみに、G&Hプラグの型名の見方ですが、
BF | 2P | N | N | N |
シリーズ | 接点数 | ハウジングのメッキ | チップのメッキ | スリープのメッキ |
となっています。
BIGFOOT=BG、RIGFOOT=RGと表記されます。
定番のプラグがBIGFOOTで、そのL型がRIGFOOT。
Nはニッケル、Bはブラック、Gがゴールドです。
BIGFOOT2P
販売価格
NNN:(税抜)¥600 (税込 ¥630)
BGG:(税抜)¥600 (税込 ¥630)
RIGHTFOOT2P
販売価格
NNN:(税抜)¥900 (税込 ¥945)
BGG:(税抜)¥900 (税込 ¥945)
BIGFOOT2P SHORT
NNN:(税抜)¥800 (税込 ¥840)
上記ケーブル、プラグのほかにも工具類、そして店によってはGeorge L’s切り売りケーブルがあったりします。
ぜひお店に足を運んでチェックしてみてください。
もちろんお店でもシールド選びのお手伝いを致しますので、お気軽にスタッフまでご相談くださいませ~
自作シールド・ケーブル関連記事
最後に、今回取り上げたCAJやBelden、Switchcraft等々の関連記事をご紹介します。
シールド選びのご参考にどうぞ。
■シールド徹底検証関連
- 【徹底検証】ギター・シールド徹底検証 その1 ~Belden~
Beldenの音質をチェックしています。(プラグはSwitchcraft) - 【徹底検証】ギター・シールド徹底検証 その2 ~CAJ & B.AIR~
CAJのサウンドをチェックしています。(プラグはSwitchcraft) - 【徹底検証】ギター・シールド徹底検証 その7 ~ANALYSIS PLUS~
G&Hプラグを使用したAnalysis Plusです。 - 【徹底検証】ギター・シールド徹底比較 その11 ~DF Leads編~
NEUITRIKプラグを使用したDF LEADSシールドです。
■メーカー探訪関連
- 【メーカー探訪】CAJ(CUSTOM AUDIO JAPAN) ~現場発のアイデアを音に活かす究極のシステム~
CAJのサウンドシステムの考え方がここに! - 【こだわりの逸品】Fractal Audio 「Axe-FxⅡ」 ~増崎孝司(DIMENSION) & 千葉成基(CAJ)が語るその魅力~
CAJ千葉氏が登場する記事です。